朝。輝く太陽の光、草花についた露、応接室の窓、桜の、木。
どれもが新鮮なものに感じられた。これらをもう、見ることが出来ない、と思うと少しだけ寂しさを覚えた。
この町には思い出を作りすぎてしまっていたのかな。僕はこの町のすべてのものを吸収するように歩いた。
ゆっくり  ゆっくり。 目の前に見えたの家。カーテンで閉ざされた小さな窓、の寝顔、の、香り。



僕の進む世界とは全く違う世界に生きる。最初は一緒に・・・。と思ったけどやめた。
には辛い思いさせたくないからね。ごめん、ね。 本当は今だって会いに来るつもりはなかった。
でも来てしまった。切ない思いを振り払うことが出来なかった。
ごろん。と寝返りをうつ。そんな小さな動作に小さな微笑みを浮かべたことは誰も知らない。



「そろそろ、時間だ、バイバイ。。」 とぽつりとつぶやき窓に足をかけて、の部屋を去ろうとしたそのとき。
「恭・・・弥・・・。」 小さな寝言を言ったの口からは僕の名前。最後の甘い囁き。
たったその一言で僕の決意を揺るがされそうになった。僕の足を、体を、心を、何かが掴んで離さない。
どうしようか。が起きてしまう。 でもその前にしなくちゃいけないんだ。










(きっとの泣き顔を見たら、前に進めないと思うんだ。 そんな僕は最後の贈り物を枕元に、)
(口づけを唇にのこし、外へ出た。 冷たい空気が僕を包む。)











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此処まで読んでくれた様と 沖原夕祈様に感謝。 冴木時雨 07.12.06