隠れるものを探したくなる
逃げるものを追いかけたくなる
これって人間の本能でしょ?

だから僕も君を追いかけるんだ



同じクラスのは僕のことを避けていた
まぁ、避けるといっても 並盛にいる生徒の殆どが僕を避けている
その理由は大方 僕への恐怖心からだと思うけど

そう考えてみると、が僕を避けるのも普通のことで
別に僕が気にするまでもないはずだけど
が僕を避ける事が、どうやら僕は、気に入らないみたいだ
だって彼女が僕から目を逸らすたび、僕の前から足早に去っていくたびに
追いかけたくなるし、イライラする
なぜ僕がこんな思いをしないといけないの?
ねぇどうして?


が僕をどのくらい避けてるか
それは、誰がどうみても僕を避けていると思われるようなそんな感じ
クラスの女子が「は本当に雲雀くんのこと苦手だよね」という会話をしているのを聞いたことがある


この前,図書館へ行った時だって
(彼女は図書委員で隔週で火曜日 図書貸し出しの係りをしている)
たまたま彼女は図書委員の仕事をしていた
その日は用事があって僕は図書館に行っただけなのに
(つまり彼女に会いに行ったわけじゃないということ でも火曜日を選んだのは彼女がいるからだけど)
は僕の顔をみると、急に仕事をしだして
(図書館は利用者が少ないから普段はやることがない)
僕が必要な本を持って、貸し出し用のカウンターへ行くと もうすでに彼女はいなかった
それで、鈴木だったか田中だったか知らないけど 彼に貸し出しの手続きをしてもらうことになった

別にさほど気にしてはない
けど、なぜ僕がそこまで避けられなきゃいけない?
僕がに何かしたか?
していないはずだ、だいいち校則をきちんと守っている彼女に「かみ殺す」だなんて言ったことがないし
彼女の前で人を殴ったこともない(トンファーだって見せたこともない)

それどころか彼女からは尊敬されてもいいぐらいだ
だってそうだろ?
去年彼女に付きまとっていた、他中の生徒(いわゆるストーカーだ)をかみ殺してあげた
それっきり彼女に付きまとうストーカーもいなくなったし
クラスで彼女が「本当によかった」って言っているのを聞いたことがある
それに、一時期 雲雀があのストーカーをやっつけた という噂が学校中にまわっていて
(普段は噂なんて大嫌いだったけれど、これだけは嫌な気がしなかった)
僕は、いわば彼女のヒーローだったはずだ

だけど、彼女は僕にお礼も言いにこないし
それどころか相変わらず僕を避けていた

それからは、彼女は可愛らしい顔立ちをしているし心配だから
風紀の仕事がどんなに忙しくても
彼女の登下校には、風紀の人間を最低1人 見張りとしてつけてあげてるのに


それに、僕はいつでも彼女が話しかけてきてもいいように
いつだって、彼女の趣味に合わせた会話ができるようにしている
今だって、彼女が読んでいる小説を自分も読んでいるし
彼女の好きなシェークスピアについても僕は詳しい
最近、映画も見るようになった

それなのに、彼女は僕を避け続ける

僕は、入学してから一度もとちゃんと会話らしい会話をしたことがなかった
ただ、一度
たった一度だけ彼女からメッセージをもらったことがある
それは、僕たちが一年生のとき 先生の計らいでクラスが仲良くなれるように
全員に手紙を書くというものだった
そこで彼女は、「雲雀君とはまだお話したことがないから、これからは仲良くしてやってね★」
そう僕にメッセージを書いたんだ
そうだ!すべてはこれが原因だと思う
(このメッセージはまだ捨ててない 生徒手帳に挟んである)

仲良くしてやってねって言っておきながら避けるってどういうこと?

そう考え出すと、またイライラする
最近こればっかりだ 彼女のことばかり考えて仕事も手につかないし
ここまでくると、が僕を見て道を引き返す行為とか 
席替えをして席が近くなると前のほうで授業を真剣に受けたいと先生に、相談しに行って席を替えてもらう行為とか
もうすべてが目障りに思えてくる



私は雲雀さんが怖い
私はどうやら目をつけられているようだ

だってそうでしょ?
雲雀さんは火曜日、わたしの図書当番の日に必ずやってきて
「君の今読んでいる本なに?」そうたずねるのだ
これは多分、今君の読んでいる本を読みたいから出せってこと

それ以来、私はなるべく雲雀さんの来る火曜日までに読み終えて
雲雀さんが来たら、そっと図書館から出ていく
相方の吉田君には申し訳ないけれど ごめんなさい

それに、一度放送で呼び出しをされたことがあった
「2-A は直ちに応接室へ」
それを聞いた私は、気絶をしてしまったらしく
先生が病院へ運んでくれて、運良く応接室へいく用事はなくなった

次の日学校に行くと、雲雀さんが昨日不良グループをつぶした という噂を聞いた

兎に角、私は雲雀さんのことが怖い
だからこうして、廊下で雲雀さんをみつけたらすぐに引き返す
だって、すれ違ったときに殴られたりしたら嫌だし
私には雲雀さんに歯向かう勇気もなければ、力だってない
いつもはこれでうまくいっていた

けれど、今日は雲雀さんがこっちへ
急ぎ足でやってくる
私のほうなのか、それとも私に用があるのか分からないけれど
とりあえず私は階段を上ることにした
(この棟の2階は理科室などがあって 普段授業があるとき以外にはこない)

けれど、雲雀さんも階段を上ってきた
つまり、簡単に言えば雲雀さんは私のほうへやってきたのだ(多分)

それから、私は3階に上がる
すると、雲雀さんも少しゆっくりになったけれど階段を上がってきて
確実に2人の距離は近くなっている
怖くて後ろを見ることができないけれど、階段のロータリーのところで彼がそこにいることが確認できるのだ

私は少しだけ急いで4階に上がる
彼から逃げなくてはいけない
きっと捕まったら駄目だと、体が、私の直感がそう言っているのだ

4階に上がるとそこに待っていたのはただの絶望だ
なぜならそこは行き止まりだったから
(ここから違うところに行くには、さっきまで上ってきた階段を下りなくてはいけない)
それに、非常用階段があるけれど今日は閉まっている
これじゃあ非常用の意味が全然ないけれどね

どうしよう・・・
このまま走って階段を下りていくのか
(きっと途中で雲雀さんに止められるだろう)
それとも、隠れるか
(音楽室があって、なんとか隠れる場所があるだろう)
それとも、雲雀さんに話しかけられるのをこのまま待つか
(きっとかみ殺される)

私は、最後の希望を隠れることにかけた
(うまくいけば、なんとか逃げれる)

音楽室に入ると
真ん中にグランドピアノがあって、吹奏楽部が使っているであろう譜面台が並べてあった
私は、その部屋の置くにある準備室に隠れた


まぁ、こんな簡単なところすぐにばれてしまうわけで
すぐに雲雀さんはやってきた
「ねぇ、隠れてるつもりなのそれ?」

そういって机のしたに入った私に話しかける
「一応・・・。」
「へぇ、ところで君なんで僕を避けているの? 僕のこと怖い?」
そうニヤリと笑う雲雀さんが本当に怖くて
(涙が出そうだったけれど我慢した)
「怖いです」そう勇気を振り絞って伝える

「そう」彼はただそういって、ちょっとだけ悲しそうな顔をした

それから暫く沈黙が続いた

それから、暫くして ニヤリとまた元の雲雀さんに戻った



今日もいつものようには僕から逃げていった

けれど、今日の僕は違う
いつもはただそれを見ているだけだったけれど、を追いかけてみることにした
すると彼女は怯えたように少しずつ上の階に上がっていく

はまだ気づいていないみたいだ
その先は行き止まりだということに

追い詰めたところで、彼女は怯えた顔をして僕を見る
怖いのかと聞けば正直に怖いと言う

そんな彼女を可愛いと思ってしまった
そして、彼女を自分のものにしたいそんな感情が生まれたのだ
なるほどこれが好きっていう気持ちなのか?

暫く考えてみて、いいゲームを思いついた

「ねぇ、今から君が逃げて もし僕が君を捕まえたら君は僕の物になる」
「何言ってるんですか?」
「だから 3秒あげるから、走って逃げれば?」
「ぇ?」
「君には拒否権も選択権もないし 次は見逃してあげないから 1」

そう伝えると、顔が真っ赤になったがあわてて机の下から出て行く
「2」
「3」

そういって、まだ音楽室からも出れてない彼女を裏から抱きしめる

そして耳元でこう呟くのだ

「3秒も待ってあげたのに、僕に捕まりたいからまだここにいるの?」
「違います!雲雀さんのカウントがはやかったから・・・」
「どっちにしろ君は僕に捕まっていた」
「雲雀さんは何がしたいんですか!離してください」

そういって怒る彼女が可愛くて
それに、こんなに彼女が近くにいるというのが初めてで
こんなにたくさん会話したのも初めてで
僕はもっと強く抱きしめた
もう逃がさない

「どうやら僕、のこと好きみたいなんだ」
「私はっ、好きじゃないです」
「だったらどうして赤いの?」

そういって笑ってやると
「もう、好きにしてください」そう彼女が言ったので
これからは好き放題やる事にするよ

そうだね、最初は何にしようか
そうだ、授業をサボってここで一日一緒にすごすなんてどうだろう?


秒あげるから走って逃げれば?

僕たちはこの言葉から始まった


「言っておくけど、僕からは逃げれないから」
「どういうことですか?」
「知らない」


どうやら私、大変な人に好かれてしまったようです
 


Emotion of Love という素敵企画に参加させていただきました
ありがとうございます
不器用でストーカーチックな雲雀さんのお話です
お題提供者はhazy